インクルーシブ教育について徹底解説。理念は?どんな取り組みをしているの?
みなさんは「インクルーシブ教育」をご存じですか?
インクルーシブ教育は、英語では「inclusive」と表記され、「包括的な」または「包み込む」といった意味を持っています。
子どもの多様性を認め、全ての子どもに対し最適な学び方、学びの場を提供していくことを目的とした教育方法です。
もともとは海外で発祥した教育方法ですが、最近では日本でも徐々に一般化してきました。
今回は、そんなインクルーシブ教育を取り上げ、詳しく説明していきます。
インクルーシブ教育ってなに?
インクルーシブ教育が、子どもの多様性を認め全ての子どもに対し最適な学び方、学びの場を提供していくことを目的としている教育方法であることは、冒頭でも述べたとおりです。
障がいの有無にかかわらず、全ての子どもたちが必要なサポートを受けながら、地域の通常学級に通い、他の生徒と一緒に教育を受けられる環境を整えてくための理念という捉え方もできるでしょう。
インクルーシブ教育は英語では、「Inclusive Education(包み込む教育)」と表記されますが、すべての子どもたちを包み込み、学び方や学ぶ場所をいたずらに分けない、限定しないことを目的として今も世界中で推進されているのです。
障がいを持った子どもたちはどんな教育環境に置かれていたの?
日本において障がいを持つ子どもへの教育方法は、時代の移り変わりとともに様々な変化をしてきました。
現代ではインクルーシブ教育の理念が浸透し、障がいのある子どもも健常者と一緒に学べる環境が整備されつつありますが、それ以前の社会では彼らはどんな教育を受けていたのでしょうか。
ここでは、障がいを持った子どもたちを取り巻いていた教育環境について項目をわけて解説していきます。
明治以前~昭和後期までの教育環境の変化
明治以前の日本社会では、障がい者に対する理解が全くと言っていいほど無い時代だったのです。
しかし、明治以降の世の中では、障がい者に対する理解が徐々に高まり、少しずつですが教育の場が与えられるようになりました。
すなわち、障がい者用の学校の新設が進んでいったのです。
これによって、自己都合では施設を指定できないものの、目が不自由な子どもや手足が不自由な子どもなど、多くの子どもたちに学びの場が提供されることになりました。
昭和に入ると、障がいのある子どもに教育を届けようという機運がより一層、高まり、1979年には、養護学校の義務化が決定しました。
この決定により、重い障がいを持っている子どもに対しても学びの場が設けられ、全ての子どもたちが必要な教育を受けられる社会になったのです。
障がいの有無にかかわらず同じ教室で学ぶ時代に
1980年代に入ると、障がいの有無にかかわらず全ての子どもを通常学級で学ばせようという動きが活発化してきました。
これは、養護学校の義務化により全ての子どもに教育の場が与えられるようになったものの、障がいのある子どもと健常な子どもとでは教室が依然として隔てられており、そのことに対して批判的な声が一部の市民からあがっていたことなどが要因です。
そのため、この頃から全ての子どもたちが同じ教室で学ぶことを目的とした教育方法、すなわち「インテグレーション教育」が模索されていきます。
インテグレーション教育の素晴らしい理念は多くの人から支持を集めましたが、子どもたちが同じ場所で学ぶことを優先しすぎてしまい、サポートが必要な子どもに対する支援環境を整えるスピードが追い付きませんでした。
その結果、障がいを持つ子どもが授業に遅れをとったり、いじめの被害に遭うなどの問題がたくさん発生したのです。
インクルーシブ教育の誕生
様々な問題を抱えながら推し進められてきたインテグレーション教育ですが、1990年代に入ると、これに変わる新しい教育理念が登場してきます。
それこそが、冒頭から説明してきているインクルーシブ教育です。
これまで発生してきた多くの問題を大きく反省し、さらに乗り越え、障がいの有無に関係なく子ども一人ひとりの実情に合わせた理想的な教育を実践する理念が誕生したのです。
日本においては、2010年に文部科学省がインクルーシブ教育理念の方向性を示すなどし、国単位で子どもたちの教育環境の整備が進められています。
インクルーシブ教育はどんな取り組みをしているの?
インクルーシブ教育が誕生した経緯についてお話してきましたが、では具体的に日本ではどのような取り組みが行われているのでしょうか。
ここでは、インクルーシブ教育における具体的な取り組みについて解説していきます。
基本的な環境を整える
インクルーシブ教育を実現させるべく、国や自治体が主体となって行っている主な活動は教育現場における「基礎的環境整備」です。
基礎的環境整備とは、その名のとおり教育現場における基礎的な環境を整備していくことで、例えば、車いすで移動する身体障がい者のためにスロープやエレベーターを設置したりする活動を言います。
インクルーシブ教育の推進による就学先の変化
インクルーシブ教育が推進されたことで、就学先の決定にも本人や保護者の意志が反映されやすくなりました。
就学先を決める最終判断は教育委員会に委ねられているものの、当事者の気持ちが最大限、尊重される仕組みに改善されています。
就学先に対する決定権が全く無かった明治の頃と比べると、格段に進歩した世の中になったのです。
さらに、現代では幼少期から子どもの発達状況を確認する検診が行われ、発達の遅れが見られた場合は相談や情報提供が受けられる他、専門家のアドバイスも得られる体制へと変化しています。
そして、発達の遅れがある子どもは支援計画書のもと、適切なサポート受けられる就学先を選べるようになったのです。
インクルーシブ教育の今後の課題
インクルーシブ教育が導入されてから、授業の在り方や教師一人ひとりの意識改革が進められてきました。
しかしながら、問題を抱えている子どもが十分なサポートを受けられているのかというと、残念ながらまだまだ問題だらけなのが現状です。
例えば、障がいを持つ子どもを通常学級に通わせることに学校側が力を入れていた場合、どうしてもサポートが属人的になってしまうことが発生すると子どもを健全に育成することができません。
スロープやエレベーターの設置に関しても、資金的な理由から見送られるケースもあります。
子どもの力を引き延ばし成長を助けていくためにも、社会の側でより一層、インクルーシブ教育の理念を共有し、推し進めていく必要があるのです。
まとめ
全ての子どもに最適な教育を施す理念を掲げたインクルーシブ教育のゴールは、障がいの有無にかかわらずみんなで学べる教育環境を構築することにあります。
しかしながら、インクルーシブ教育という言葉自体が社会に十分浸透していないばかりか、教育現場では上で書いたような課題が山積しているのが現状です。
私たち大人にできるのは、インクルーシブ教育についてもっとよく知り、周囲に働きかけ、子どもたちをより良い教育環境に導くことではないでしょうか。
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